事例紹介

〇新規事例:コロナ禍を経て、強固な収益力と顧客層拡大を実現して復活した居酒屋

支援前の状況

■コロナ以前から売上と利益が減少、コロナ禍では3年連続大赤字

 X社は、社長が小さな居酒屋を始め、奥様と家族経営し、社長の人柄、料理、良心的な会計で地元に常連客が増え、徐々に店を拡大してきた。最盛期には、3店舗を構え、そのうち2店舗は150席以上の大函、X社の全社売上は2億円を大きく超えた。しかしながら、コロナ以前より、売上が伸び悩み始め、食材仕入れおよび様々な経費を差し引くと、利益が残せなくなった。世の中全般にアルコール離れ、職場での宴会減少の傾向が見られ、社長は今後昔のように売上を伸ばすことは困難と判断し、「そこそこ」の売上でも黒字を確保できるような、引き締まった収益構造への転換が必要と感じ、その旨メインバンクに相談し、当職が支援を依頼された。

支援した内容

■コロナ禍中に、経費削減、原価率低減、顧客層の拡大努力

*コロナ前に収益性が悪化した時点で、社長は自身、奥様、長男の役員報酬を大幅に削った。しかしながら、その分は、私用も混じった「接待交際費」「通信費」が膨らみ、また店舗経費も高級な消耗品を多用するなど、販管費が増加していた。社長の合意のもと、毎月の経費計画をたて、月次の経営会議で厳格にチェックし、PDCAを迅速に回した。

*原価率の目標を立て、店ごとのの原価率はもちろん、単品料理で出数の多いトップ50の売上推移とその原価率を継続的に記録、確認した。粗利の大きな料理を、店内のPOPおよびスタッフの口頭の「おすすめ」により、積極的に販促した。また、店の原価率が上がった月には、料理長と原価率低減のための具体策を検討した。

*当社の主要顧客は、地元の50歳以上の常連客であったが、コロナ禍により、外食・飲酒の機会は激減していた。働き盛り、活発で、旺盛に飲食してくれる若年層顧客を増やす必要があった。若年層を意識した、ボリューミーかつおしゃれな料理メニューを増やし、アルコールを飲まない人向けの、ノン・アルドリンクを充実させた。

*HPをリニューアルし、料理の地産地消を強調しながらも、店がモダンでくつろげるおしゃれな空間であることをアピールした。HP、外部予約サイト、Lineでの予約を可能にした。
ネット上で、顧客からの「書き込み」があった際は、好意的なコメントにも、厳しい批判や叱責にも、迅速に「オーナーからの返信」を返すようにした。

結果

■コロナ明けの2023年度は収支トントン、2024年度は黒字化の見込み

*コロナが明けて、若年層顧客中心に、個人的な集まり、小宴会が戻ってきた。当社の「飲み放題コース」は、3時間と十分な時間をとり、料理の品数が多く、ノン・アルも含めてドリンクメニューが豊富で好評である。かつての50歳以上の常連客に比べ、客単価は高くなった。

*従業員全体に原価意識が共有され、ホールのスタッフは粗利の高い料理、旬の食材を積極的に販促し、調理スタッフは仕入れ価格を強く意識するようになった。

*販管費の合計額は毎月厳しくチェックし、「接待交際費」「通信費」は予算内に抑制され、
消耗品等の購入先も見直し、個々の購入価格も厳しくチェックするようになった。

*コロナ後も、居酒屋文化がかつての水準までもどって来てはいない。当社の売上・利益を押し上げるために、「注文弁当部門」を新たに立ち上げ、地元の団体、学校、企業から予約注文を取り始めた。弁当売上は徐々に増加しており、部門利益もすでに黒字である。